2019年から地方自治体におけるナッジの取り組みは急速に広がり、横浜市のYBiT(Yokohama Behavioral insight and Design Team)を皮切りに、他の自治体でも次々とナッジユニットが設立されています。これにより、地方行政でも行動科学に基づく政策介入が行われるようになりました。
●横浜市行動デザインチーム(YBiT)
YBiTは、自治体版ナッジユニットとして日本初の試みで、横浜市の職員を中心に発足しました。その活動は、行動インサイトを政策に活かすためのネットワーク構築や実証実験の実施です。特に、他の地方公共団体との連携や知識共有に重点を置き、地方行政全体でのナッジの活用を推進しています。
●尼崎版ナッジユニット
2019年10月に兵庫県尼崎市で設立されたこのユニットは、職員が自主的に研鑽を積む「自主研修グループ制度」を活用しています。自主的に行動科学に基づく政策アイデアを模索し、市民サービスの改善に寄与しています。
●岡山県版ナッジユニット
岡山県のナッジユニットは、都道府県単位で初めて設立された組織です。政策推進課の職員が中心となり、県庁内の業務にナッジを取り入れることで、県民サービスの向上を目指しています。
●つくばナッジ勉強会
茨城県つくば市では、ナッジに関する勉強会が設立され、事務局は通常業務の一環として活動しています。市民に対する公共サービスを改善するためのナッジ導入を積極的に進めています。
経済産業省とナッジの関わり
地方自治体だけでなく、中央政府でもナッジの活用が進んでいます。2019年に経済産業省内に設立された「METIナッジユニット」では、社会保障やエネルギー分野など、幅広い分野でナッジを活用した政策が実施されています。
経済産業省の取り組みは、エネルギー消費の削減や中小企業の成長支援など、非常に具体的な政策課題に直結しており、ナッジを使ってより効率的な解決策を導くことを目指しています。特にエネルギー消費に関する分野では、行動経済学の理論を応用し、消費者がより環境に優しい選択をするように誘導する施策が進行中です。
内閣府の取り組み
さらに、内閣府でもナッジの普及を目的とした有志の活動が展開されています。環境省の「プラチナメンバー」と協力して、全府省庁を対象としたセミナーやワークショップを開催し、職員が行動経済学やナッジの原則を理解し、自らの業務に応用する機会を提供しています。
このように、日本各地でナッジの取り組みが広がり、中央から地方まで幅広い分野での政策改善に役立てられています。これからもナッジが、政府や地方自治体の政策に組み込まれ、社会全体の効率や生活の質の向上に寄与することが期待されています。