ナッジ(Nudge)とスラッジ(Sludge)は、いずれも行動経済学の概念として知られていますが、目的や影響が異なります。キャス・R・サンスティーンの著書 「スラッジ 不合理をもたらすぬかるみ」(2023年) では、ナッジとスラッジを以下のように対比しています。
- ナッジは「ひじでそっと突く」、スラッジは「摩擦」
ナッジは、行動を促すための軽い誘導を指しますが、スラッジは行動を阻害する摩擦のような存在とされています。 - ナッジは良い目的にも悪い目的にも使われる
ナッジは、健康促進や環境配慮の行動を後押しする目的で使われる一方で、不適切なマーケティング手法にも利用される可能性があります。 - スラッジは常に害悪とは限らない
スラッジは、不必要な障壁を生むこともありますが、適切な設計であれば慎重な意思決定を促すための仕組みとして機能することもあります。 - 熟慮を促す仕掛けとしてのナッジとスラッジ
行動を急がせるナッジもあれば、慎重な判断を促すスラッジもあり、文脈によっては両者が共存しうると考えられています。 - ダークパターンとスラッジの関係
ダークパターン(消費者の意図しない行動を誘導するデザイン)の多くはスラッジを利用していますが、場合によってはナッジの手法も悪用されることがあります。
こうした概念を理解し、企業や政策立案者がナッジを活用する際には、スラッジによる不要な摩擦を避けつつ、倫理的で透明性のある仕組みを構築することが求められています。