昨日の記事で紹介した社会関係資本は、組織のみでなく新規事業を検討する際も役立つだろう。特にナッジを活用し行動変容を促す事業と相性がよい。
例として、消費者の環境意識向上を目的とした薪ストーブ事業を考えてみたいと思う。
事業の前提として、電気・ガス・灯油等の化石燃料利用を薪ストーブに代替することは環境保全に繋がる。(※1)
まず薪ストーブ利用によっていかに化石燃料使用を削減できたか、すなわち二酸化炭素生成を削減できたか、薪ストーブ利用者にて情報共有するネットワークを構築する。また薪ストーブの効果的な利用方法(調理など)を投稿する等、事業者発信の情報はもちろん、利用者同士も情報発信することで利用率を伸ばす仕組みを作る。
機微な情報を含むため規範は必須であるが(※2)、ネットワークを使用する中でルールを改善していき、同じ目標に向けて行動する一体感により全体的な利用率を上げていけると期待できる。
そうした行動変容・目標達成していく中で事業者と利用者・利用者同士の信頼関係を築き、持続可能なモデルへ更に発展しいくことが可能になる。
上記例はあくまで仮説であり、必ずしも全事業において社会関係資本がメリットをもたらすとは限らない。しかし利用者が無理なく行動変容するためのキーとして、やはり社会関係資本(昨日の記事に沿うと『信頼』『規範』『ネットワーク』)は重要な観点であると考える。 M S
※1:薪の元となる木は生長する際に二酸化炭素を吸収し、燃える際にその二酸化炭素を放出する。そのため地球の二酸化炭素総量の視点上、薪を燃やす行為自体は二酸化炭素を増やす行為にはならない。一方、日本各地に散見される荒廃した森林は、台風等の被害を受けやすい・大雨等により土砂災害を起こしやすくする、と問題となっている。こうした森林から薪用に伐採することは、自然環境災害を防ぐことに繋がるため、薪ストーブ使用の活性化は環境保全に繋がると解釈できる。
※2:当HP「ナッジとは」記載の通り、ナッジ推進の上での倫理問題について専門的に扱う『ナッジ倫理委員会』がある。テキストを追加する